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歩く。
自分と、主との事を考えながら。
歩く。
主の去り際に見えた、何処か儚げで陰りのある笑顔の事を考えながら。
彼女は歩き続ける。
今後の任務の事を考えながら…。
彼女は様々な事柄を考えながら、仲間達の待つ集合地点へと辿り着いた。
「おはようございます、とーこさん」
「おはよーさん。なんや朝も早よから何処行ってたん?」
「ふふっ…ちょっとした野暮用ですよ」
屈託のない笑顔をして返事を返す。其の裏は悟られてはいけない。
詮索するのも野暮という物と、彼等は其処で会話を打ち切り再び遺跡に向かっ
て歩き出した。
尤も、年端も行かない同行者は、そこまで考えてはいないのだろうが…。
「外で集めた情報ですと、この先にはまた『べるくれあ』なる集団が進路を塞
いでいるようですが、どうしましょうか」
一頻り遺跡の中を進行し、開けたところで昼食を取っていた時に牡丹がポツリ
と話を切り出した。言われて視線を先に向け、注意深く耳を済ませてみれば、
確かに、だが、微かに魔物ではない『何か』が争っていると思わしき音が聞こ
えてくる。
「ふむ…その集団はこの間の兵隊共と同程度なのか?」
「いえ、もっと強力な集団のようです。恐らく今の私達では…」
彼女はその言葉を、最後まで発する事を躊躇った。
それを口に出してしまえば自分達の無力さを、自ら肯定する事になる。
暫しの重い沈黙。
「――そしたら、針路変更したらええやんね」
其の言葉の先へと皆が振り返る。それを発したのは銀狼シルバリオだった。
言葉のニュアンスと声色で誰かは容易に想像がつくが、こういう時は得てして
発言者へと視線が集まるのは道理。
「あ…あれ…?オイラ、なんか悪い事言った…?」
「いや…。それもいいかも知れんな。他のものはどうじゃ?」
ザジに問われ、夫々に表現の仕方は異なるが、どれもが肯定の意見だった。
「あの、針路変更とは言っても、何処へ行くんです?」
「尤もな意見じゃな、シルバ、何か案はあるのか?」
「えっ、うーん…あ、せや!兵隊達が居った先に、なんでもサンドゴーレムっ
てーのが居るらしいで。そっちならオイラ達でもなんとかなるんちゃうかな」
「サンドゴーレム…ね。OK、ちょっと遠いけど、そっちへいきましょう」
満場一致で、一向はサンドゴーレム退治へと向かう事になった。
多少の落胆をする一行の中で、非常に嬉しそうな顔をしている者が一人。
にこやかな顔を浮かべていたのは、霧島沓子その人である。
そもそも宝玉や財宝に興味の無い沓子にとっては此方のほうが好都合だった。
なぜならば、彼女の任務は『遺跡に住む生物の生態調査』だからだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
行く手を遮るベルクレア騎士団には何の興味も沸いてこない。遠回りをする事
にはなるが、その分、遺跡内のより多くの生物を見ることができる。
― これで、ある程度調査が進めば嬉しいのだけど、ね…
そして、彼女の思いは現実となり、実際に新たな生物と遭遇する事になった。
やたらと巨大な体躯をした蜂、人語を解し喋り獰猛な狼。そんな生物達を見て
いた時、シルバリオが唐突に声を上げた。
「なんやー!これー!」
そちらを見れば、彼の視線の先には宙に浮く奇妙な青い玉が3つあった。
其の玉は放電を繰り返しながら、ゆっくりとした速度で彼等へと近づいてくる。
急いで周囲を見渡すと、黒い玉や青い玉と交戦している探索者たちが見える。
「今度はあれと戦うんかい…また、けったいなモン出てきよったなー…」
「四の五の言っとらんでさっさと戦闘準備をしろ!来るぞ」
「へいへーい、んじゃいっちょやりますかねー」
そして彼等は各々の手に武器を構え、青い玉と交戦を開始したのだった。
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新しいもの書こうと思っていたのに、冒頭部が前回更新からの
続きになってしまった…
内容としては前回読んでない人でも判る、はず…たぶん。
更新前日に書くもんじゃないねー
闘技大会のセリフとか考えてたお陰で頭の切り替え追いつかなくて、
文法やらなんやらgdgdになってて恥ずかしい('A`)
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