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思ってみれば、遺跡の中に入ってから、既に6日が経過していた。これでは、流
石に疲れも出るはずだ。そして、彼女達は行軍の合間に軽く休憩を挟み、その後、
巨大な『蟻』と戦っていた。
普段の生活であれば、蟻とは『軍隊蟻』が世界中で尤も大きいとされる部類では
あるが、どうやら、この島では以前生活していた時の常識は通用しないようだ。
体躯の巨大さは、大凡にして成人男性よりも二周りほど大きい。当然の事ながら、
それに比例して蟻の唯一の武器である顎も肥大している。
「あの顎に挟まれたら…危険所じゃないですね…」
巨大な蟻を前にして、彼女は何気無しに呟く。そのような苦言を呈せずとも判る
事では在るが、言わずには居られないのが人の性というモノだろう。
「ヤツラを今まで通りに倒せば外でゆっくりできる。もう一踏ん張りじゃよ」
「そうですね…。それじゃ、ヤヨイちゃん、ザジさん、行きましょう!」
「応!」
三人は蟻の懐へと走り出した…。
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三人の戦いの結果は惨敗。
彼女等は避けられると踏んでいた顎の一撃を避けきることが出来ず、そのまま連
撃を浴びて地に倒れた。美しい像は、三人よりもずっと後ろのほうで「うふんう
ふん」言っていただけで、殆ど役に立たなかったようだ。
「…っー…。痛たた…」
「む…ぅ…、どうやら生きているようじゃ…の…」
「体の…彼方此方は痛みますが…、全く動けない程では…ないですね…。」
「ヤヨイ、お主は大丈夫か?」
「クマさんはボロボロになっちゃいましたけど、私は大丈夫です」
「そうか…」
短い呟きとともに見せた安著の顔。
ヤヨイの外見が幼い分、ザジとしては余計に彼女の事が心配なのだろう。
「では…、遺跡から出るとするか」
辛うじて動ける体を引きずりながら、そう遠くも無い先に見える『魔方陣』へと
向かって歩き始めたのだった。
魔方陣を『記録』し、遺跡の外に出た途端に異変は起こった。
『え…?』
遺跡の内部でズタボロになった痕跡が、一様にして何事も無かったかのように、
体の自由が利くようになっていた。
「…お二人とも、身体の具合はどうです?」
「不思議なことも在るものじゃな…。先刻まで歩くのが精一杯だったというに…」
「クマさんも綺麗になってますよ」
-彼女等が驚くのは無理も無い。
-この島と遺跡とは、そう言うモノなのだ。
-遺跡の中と外では、空間軸がズレている。
-それに伴い、遺跡内で負った傷は、外に出た途端に全てが癒される。
-そう、あたかも全てが『無かった事』になるように…。
「まあ、此処はそう言う所ですし、不思議ですけど気にしない事にしましょうよ」
なにやら考え込んでいる二人を尻目に、ヤヨイが明るくそう言った。
-全ての事象を、常識と正論で考えるほうが間違っている-
彼女は、暗にそう言ったのだ。
「それよりも、必要なものを先に買出ししましょうよ。また、中に入った時に困
りますし」
「そう…ですね。そうしましょうか。」
ヤヨイに袖を引かれながら、二人は遺跡郊外にある市へと向かうのだった。
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アリに負けたので遺跡外に出ました…!
まぁ、勝ってても出たけどさw
色々と理解している(と思われる)ヤヨイちゃんの裏が
チラチラと見え隠れしている感じにしてみた。
発想力たらなすぎて泣ける
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